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田母神氏に喝采を贈る人はどこへ向かうのか
2008-11-29-Sat  CATEGORY: 安全保障
 今書店にある月刊雑誌は大量に並べれれている、雑誌名はWiLL 総力特集100ページ 田母神論文のどこが悪い! と題し、独占手記と中西輝政氏、渡辺昇一氏他の論文を掲載している。一体今の日本でなにが起きつつあるのか非常に不安なものを感じる

1 広がる田母神氏の講演と防衛省の苦慮

 ニュースメディアにとってこの問題はすっかり過去の問題だ。元厚生事務次官への事件、タイの空港占拠、インドのムンバイの同時テロ事件に主役は移っている。しかし

 11月29日 毎日新聞 <防衛省>田母神氏講演に苦慮「手の打ちようない」
「田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長は12月、講演などを立て続けに行う予定で、防衛省が神経をとがらせている。1カ月前まで航空自衛隊トップだった人物が、政府見解から逸脱する発言を公然と繰り返せば政府や自衛隊への世論の批判が収まらない、と警戒感を強めている。」
 
 防衛省は自衛官たちが命がけで国民を守るという重責を担うが、そのためには敵とは言え人を殺すことを求められる特殊な官庁だ。
きちんと職務をこなして当たり前の官庁において、国土交通省のように道路を作るとか、厚生労働省のようにお金を給付するという恩恵を目に見える形では示しにくく、あるとすれば災害救助のだけだろう、それも警察や消防、医療のほうが目立つ。なのでこれ以上の失点を消したい気持ちはつよいのだろう
 記事で注意が必要なのは、田母神氏への講演依頼が多数あることだ。つまり、彼の発言に期待しそれを広めいたいという意図と活動がひろがっていることがここから見えてくる

2 騒ぎは日本国内だけ、海外からは反応なし
 
 これまで、この手の問題はおやけになると国際社会、特に中国と韓国の抗議と市民による抗議行動が発生した。しかし今回はそんなニュースはとんと聞かれない。これはいったいどうしたのだろうか?
 なんせ問題は60年以上昔の話。今世界は経済の混乱の対応に追われ、アジアではインドのテロやタイの混乱など自国のことで手一杯だ。
 それ以上に日本が自衛官がどんなに強気の発言をしたとしても、日本いかに最新の武器を持っていようがアメリカに首根っこを押さえられ何もできないことが明らかで、心配に及ばないと思っているのかもしれない。それにこのような歴史感をもっていることは過去の何度も明るみになっていていまさら新鮮味もないのだろう。
 つまり、日本が世界のなかで特に安全保障上の影響力をいかにもっていないかを示しているともいえる

 これに対し日本国内は問題が明るみになった当初は連日ニュースで取り上げられもし、冒頭紹介した雑誌のように一大キャンペーンでも企画したかのように、公然とこれまでの政府見解に反旗を翻しつつあるのではないだろうか

3 なぜ今なのか

 でななぜ今なのか? それは共産主義の崩壊と戦後63年という月日の経過にあるのではないだろうか。1970年までは共産党と社会党のように自民党とイデオロギーで対立勢力が一定の力をもっていた。さらに戦争に負けた国を富ませることに注力した政府はとにかくことを荒立てることは避け、本音で何を考えようと建前では戦争への反省を口にした。 そして実際に戦争を体験した世代が多くいて戦争への嫌悪感をあらわにしている中、主でだって「侵略ではなかった」というのは言い出せなかったのだろう

 そろそろ、当時の関係者もいなくなるし、不都合な資料の多くは破棄したあとで、今から見つかる資料といえば戦争を始めた当時の思想を示すものになる。そのうえ自国の正当性を主張ることは、自国の非を認めるよりはるかに心理的に前向きになれる。これらを総合し徐々に戦後かくしてきた本音を表にだせると感じているのだろう

4 田母神氏に喝采を贈る人はどこへ向かうのか

 このような傾向と議論はあまりに内向きではないだろうか。かつて栄光の日本(=歴史的にはあまりに特殊な時代)の復活は、まるでイスラム教徒がかつての栄光の時代に立ち返ろうと正教一致の国を目指す行動と重なって見えてしまう。
 これはイスラム圏や日本だけでなく欧米でも戦後の国連をつくったときのような理想論から、欧米がアジアの新興国を市場とみなし経済における覇権争を全面に出していることからも力の時代に戻りつつある。それは、それぞれの国が自国一番大事に思う内向きな世界になるということでもある。
 歴史は繰り返すという、しかし、世界にはかつてのようなフロンティアは存在しないし、各国の相互依存もかつてないほど進んでいる。いまひとたび問題が起きれば今の経済危機のように全世界に波及する。
 第二次世界大戦では過去に例を見ないほど多くの人命が失われた。自国の誇りを取り戻すため「東京裁判」の歴史観を否定するのはいいだろう、しかし、欧米や旧ソ連・中国が日本と同罪ならなぜ悲惨な戦争にいったか冷静に考えるべきで、過去に失敗にいたった思想を復活させることにどれほどの意味があるだろうか
 田母神氏の講演に喝采を贈り、気分が高揚した人たちは何を得て、次にどんな行動をするのだろうか? 論文の些細な誤りや政府の対応・メディアの集中非難よりも、そのことのほうが私にはより不安を感じる

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